その名、アレル。
著者:新夜シキ


「この子の名前は『アレル』だ。いい名だろう」

「へぇ〜、無粋なあなたにしては気が利いてるじゃない。『希望』か」

「そう。『希望の世界・アレルガルド』に生まれた希望、だからアレルだ」

「この世界の希望の星は、あなたでしょう。この子にまで重荷を押し付けないでよ」

「おいおい、俺だけならいいのか?」

「あなたは殺したって死なないからね」

「言ってくれるな…。まあ褒め言葉と受け取っておこう」

「褒めてるのよ、これでもね」

「だが、この世界の希望ってのはちょっと違うかな。この子はあくまで俺たちの希望なんだ」

「…どう言う事?」

「つまり、だ。『希望』を守る為に、『希望』が安心して大きくなれる世界を創る為に、俺は旅立つって訳だ」

「成程。今回はちゃんと考えてるのね。ちょっと見直したわ」

「失礼な。俺だって何も考えずに生きている訳じゃないぞ。この子の行く末をだな……」

「よっく言うわよ。普段からちゃんと考えて行動してる人が、アリアハン城で迷子になったりする?あの時私、すっごく恥ずかしかったんだからね!」

「そ、そんな昔の話を……。いい加減止めてくれ。耳にタコが出来る」

「いつまででも言い続けてあげるわよ。……あなたが帰って来た後もね」

「マリア……」

「だから……必ず帰って来てね」

「約束だ。帰って来たらアレルと三人でピクニックにでも行こうな。それまでアレルを頼んだからな」

「絶対だよ……?」





「ああ。お前こそ、俺が帰って来るまでにその泣き虫を何とかしておけよ――――――――」



――――あとがき

 ちょっと短いですが……アレルの名前の由来、オルテガの旅立つ理由を書いてみました。この辺は完全に私の創作(妄想?)です。
 オルテガは『世界を救う』と言う大義名分以前に、『自身の大切な者を守りたい』と言うあくまで個人的な理由で旅立ったのではないかと言う気がしたので、このような流れになりました。会話文だけなので多少伝わりづらい部分もあるかと思いますが、上手く表現出来てるといいなぁ。



――――管理人からのコメント

 オルテガとマリアの会話だけで成り立っている、ひとつめの番外編です。
 地の文なしでも、相変わらず魅せてくれます、シキさん。

 さて、珍しいことに今回のサブタイトルは完全な僕のオリジナルです。意味もストレートです。
 僕の中では、これ以上ふさわしいものはない、という感じのサブタイトルになっているのですよ。
 『確かに』と思って頂けると嬉しいです。
 それでは。



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